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【怪奇】山の怖い話【超常現象】その一

920 :山の神(その3):2016/10/29(土) 03:40:55.13 ID:sYvFQBjL.net
幸いにも無口ながら藁縄の救助者は確りと救助を続けてくれた。
力が掛ると僅かに手応えが変わり、縄の反対側が樹木等に縛り
付けられているのではなく、誰かが確りと保持してくれている
のが伝わってくる。もう少し、あと一息、で道の端に肘が掛り
道が見渡せる様になるその時、縄の手応えが フッ と消えた。
「うわあっ!」危うく落っこちかけた彼は何とか両手と両肘で
道にしがみつき危うく難を逃れた。
「なんて事するんだ!危ないじゃないかっ!」
這う這うの体で道にズリ上って彼は怒鳴った。
押し包むように迫る夕闇の中で彼に答える者はいなかった。
急斜面の中腹を切通して作った幅1メートルも無いような細い道。
前後には誰もおらず、まして左右の崖や渓谷に逃れる術もない。
「えっ?」彼はふと気づいた。縄を登ってる時、何度見上げても
一度も縄を引き上げる人影を見なかったが、そもそもこんなに
狭い道で、姿を見られる事無く成人男性を引き上げる事など
およそ人間業ではない。
そして傍らに落ちている物体の正体に気づいた時、彼は恐怖の
あまり麓の方向へ走り出していた。
それは、ボロボロに腐った藁縄の切れっ端だった。
終バス、終電を乗継ぎ彼が常夜灯の灯る我が家に帰ったのはもう
夜半過ぎだった。新婚の妻を起こさぬ様、そっと寝室に向かうと
今日一日の出来事がまるで夢であったかのようにスースーと妻は
小さな寝息をたてて寝ていた。その妻の柔らかな髪を慈しむように
手櫛で漉いた彼は、今度こそ腰が抜けてへたり込んでしまった。
彼の指には小さいけれども紛う事無き朽ちかけた藁の繊維が一本。

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